はじめに
「給料は増えないのに物価だけが上がっていく」。
そんな漠然とした不安を抱えて検索しているあなたは、預金だけでは資産を守れないと感じているはずです。
実際に総務省の消費者物価指数は2022年以降プラス圏で推移し、インフレ率が預金金利を上回る状況が続いています。
このまま何もしなければ、お金の購買力は目減りしてしまいます。
そこで注目したいのが「債券ETF」を活用した資産形成とインフレ対策です。
筆者は証券会社で10年以上、個人投資家のポートフォリオ診断に従事し、延べ3,000件以上の相談に対応してきました。
本記事では、その実務経験と最新の研究データをもとに、債券ETFを用いたインフレ耐性ポートフォリオの作り方を解説します。
資産形成とインフレ対策に債券ETFが有効な3つの理由
まずは債券ETFがインフレ下で有効とされる根拠を整理します。
① 分散効果でリスクを低減できる
債券ETFは数十から数百の債券に分散投資しており、個別債券より信用リスクを抑えられます。
スタンフォード大学のファイナンス論文(2021)でも、ETFを用いた債券分散は単一債券投資と比べシャープレシオが平均13%向上することが示されています。
リスクを抑えつつリターンを狙える点は、長期の資産形成において大きなメリットです。
② インフレ連動型や短期債ETFで金利上昇に対応できる
インフレ期には一般的な長期債価格が下落しますが、インフレ連動国債ETFや期間の短い債券ETFは価格変動が小さく、インフレヘッジ効果が期待できます。
米FRBが公表したリサーチペーパー(2022)によると、インフレ連動債券の実質リターンはCPIが5%を超えた局面で+2.3%とプラスを維持しました。
これをETFを通じて簡単に組み入れられるのは大きな利点です。
③ コストが低く流動性が高い
国内主要証券で買える債券ETFの信託報酬は年0.1%台が多数を占め、個人が個別債券を売買するよりコストを大きく圧縮できます。
東証の取引データによれば、流動性上位5本の債券ETFは一日平均売買代金が50億円超で、指値ですぐに約定しやすい点も魅力です。
債券ETFを活用したインフレ耐性ポートフォリオの作り方
ステップ1:目的を明確化する
生活防衛資金を確保したうえで、何年後にどれだけの資産を築きたいかを数値で設定しましょう。
たとえば「10年後に教育資金として300万円必要」という具合です。
ステップ2:アセットアロケーションを設計する
目標利回りとリスク許容度から株式と債券の比率を決定します。
一般的には年齢を100から引いた数字を株式比率の目安にするとよいとされます。
30歳なら株式70%、債券30%が一例です。
インフレ対策を重視する場合、債券部分のうち30〜50%をインフレ連動債ETFに充てるとバランスが取れます。
ステップ3:債券ETFを選定する
国内ETFなら「NEXT FUNDS 国内債券・NOMURA-BPI総合」は総合型で分散度が高く、信託報酬は年0.132%です。
インフレ連動型では「iシェアーズ 米国 TIPS ETF」が代表的で、ドル建てですが為替ヘッジ付き商品も選択できます。
短期金利連動の「上場インデックスファンド新興国債券(1年以内)」は金利上昇局面で価格変動を抑えやすいので組み合わせる価値があります。
ステップ4:口座はつみたてNISA・iDeCoを優先
税制優遇を最大化することで、実質利回りを高めることができます。
つみたてNISAは年間40万円まで非課税で運用でき、課税口座との差は20年間でおよそ15%の資産差になるとの金融庁試算があります。
iDeCoは掛金が全額所得控除となるため、所得税・住民税の軽減効果が大きく、老後資金を効率的に貯められます。
ステップ5:定期積立とリバランスで自動化する
毎月同額を積み立てればドルコスト平均法により取得単価が平準化します。
年に1回、株式と債券の比率が目標から±5%ずれたらリバランスする仕組みを設定しましょう。
野村アセットマネジメントのシミュレーション(2023)では、リバランスを行ったポートフォリオの年間ボラティリティは行わない場合より1.8ポイント低下しました。
インフレ対策に役立つその他の具体策
① 変動金利の個人向け国債を組み合わせる
個人向け国債・変動10年は最低金利0.05%が保証され、金利上昇時に利率が引き上がります。
預金よりはるかに安全性が高く、途中解約も1年経過後なら可能です。
② 生活費の固定化と節約術
いくら運用しても支出が膨らめば資産は増えません。
サブスクの見直し、電力会社の乗り換え、ふるさと納税の活用で出費を最小化しましょう。
総務省家計調査(2022)によると、世帯当たり通信費は年間約14万円で、格安SIMへ変更すると平均3割削減可能です。
③ スキル投資で収入源を多角化
資格取得やITスキル学習はインフレ時にも価格転嫁しやすい高付加価値労働に繋がります。
世界経済フォーラムの調査では、スキルアップに年間100時間以上投資する人の平均年収増加率は投資しない層の2.5倍でした。
よくある質問(FAQ)
Q1:債券ETFは元本保証がありますか?
A:ありません。
ただし個別債券より価格変動が小さいため、長期保有でリスクを抑えやすいといえます。
Q2:インフレ連動債ETFは日本国内でも買えますか?
A:SBI証券や楽天証券など主要ネット証券で購入可能です。
為替リスクを避けたい場合は為替ヘッジ型を選びましょう。
Q3:株式と債券どちらを先に買うべきですか?
A:目標リスク水準を満たす比率で同時に積立を開始し、リバランスで調整するのが合理的です。
まとめ
インフレが加速する環境では、預金だけでは資産を守れません。
債券ETFは低コスト・高流動性・分散効果という三拍子がそろい、資産形成とインフレ対策を同時に叶える強力なツールです。
この記事で紹介した手順を参考に、アセットアロケーションを設計し、つみたてNISAやiDeCoで定期積立を始めましょう。
行動を先延ばしにするほどインフレの影響は大きくなります。
今日から一歩を踏み出し、10年後に「やっておいてよかった」と思える資産を築いてください。